【ザワメキキャラバンin長野@TERMINAL51°】さまざまな人とアートが行き交う「ターミナル」で起こる化学変化を楽しむ

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長野市のコワーキングスペース&シェアオフィス「TERMINAL51°」(ターミナルゴーイチ)で、ザワメキアートサポートセンターのキュレーションにより、長野市在住のアーティスト・末次拓実さんのオリジナルキャラクター「スタモン」を展示した「スタモンロックミンのべっそう」が開かれました。

TERMINAL51°の倉庫内にあるロッヂとコワーキングスペース内のライブラリーにスタモンたちが100体以上勢ぞろい。

TERMINAL51°を運営する株式会社水島紙店代表取締役の水島康明さんに話を聞きました。

ターミナル51° を運営する水島康明さん

TERMINAL51°は、紙製品の卸売業の水島紙店の事務所をリノベーションし2023年にオープン。室内にライブラリーを備えており、棚にはアート系の大型本から長野県にちなんだもの、ビジネス書や文庫、漫画など、多種多様な本が並びます。

これらは水島さんの蔵書と、本を通じて地域の活動団体に寄付を行う「寄付の本舎ほんのきもち」の蔵書です。

水島さんは、地域でさまざまな活動をする人たちにTERMINAL51°という場を提供。この本棚にもスタモンが展示されました。

「この場所をいろいろな人たちが行き交う場にしたいという気持ちを込めて、“ターミナル”と名付けています。仕事も人生もアートも行き交って、想定外の化学変化が生まれると面白いじゃないですか」と水島さんは話します。

倉庫内にあるロッジの美術館

今回の展示のメイン会場になっているのはTERMINAL51°の倉庫内にある“ロッヂ”。

ここはコワーキングスペースのリノベーション工事中に水島紙店の仮事務所として使用されていた木製の小部屋です。

コワーキングスペースがオープンした現在は、貸しスペースとして活用されています。

ナナイロと出会い、対話アートの趣旨に共感した水島さんは、今回初めてこの空間を展示会場として提供しました。

「障がいのある方たちの社会参加の選択肢が増えればいいなと、かねてから考えていました。いろいろなことにチャレンジできて実社会の一員としてナチュラルに表現活動できる場があってほしい。『障がい者が作った作品です』という前置きをせず、『この作品いいな』と自然に思える展覧会があればいいし、機会があればそういう企画に関わりたいと考えていました」

強い個性を感じさせる末次拓実さんの作品群

スタモンは、牛乳パックとカラーガムテープで作られている立体作品。

キャラクターたちは、大きさも色使いも造形も多様でそれぞれがまったく違うのに、スタモンたちが集う展示空間には末次さんの強い個性を感じさせる一つの世界が広がります。

スタモンを制作する時、末次さんはまずスケッチブックに平面図をイメージ化して設計し、いつ何を作るかの1週間の工程表を作成。

利用施設にある自分専用の制作スペースで1日1体を作っていきます。スタモンの制作が末次さんの生活の中心になっているといいます。

自宅3階には1000体を超えるスタモンが保管されており、今回展示されたのはそのごく一部。

なお、長野市役所内のカフェ「cafe morino..」(カフェモリノ)では、スタモンが常設展示され、定期的に展示替えされています。

「オリジナリティがある造形なので、ディレクターを立てて、もちろん作者とは対話を重ねながら、スタモンをモチーフにしたT シャツにプリントするなどして、プロダクトとして販売されていたら面白いのではないでしょうか。アパレル業界の大手企業の力を借りるなどして、障がいのある方たちのアートが世の中に広まり、彼らのアートがあたり前に存在するような社会になっていってほしいのです。彼らの持つ研ぎ澄まされた感性、直観的な想像力の独創性はすごい。『障がい者アート』とカテゴライズせず、消費者がプロダクトを購入した時に、作者である彼らの人となりが自然な形で伝われば良いと思います」

TERMINAL51°の利用者がアート作品に触れることで理解が進み、社会を変えるきっかけになれば――と水島さんは期待。

「まだまだ一部の限られた世界の中で行われている、障がいのある方たちのアート活動を多くの方に見てもらいたいのです」と力を込めていました。

「陶芸や紙漉きなど、伝統工芸の世界とコラボしたら面白いのではないでしょうか。茶人として知られる古田織部の織部焼のように、ダイナミックで定石を崩した表現が、形が整ったものとは違う可能性をすごく秘めている気がします。出来上がった作品をただ展示するだけではなく、TERMINAL51°という場所を使って、そうしたものづくりのプロセスも一緒に共有してみたい。ワークショップで一緒にろくろを回したりして、障がいのある人もない人もみんなが一緒になってアートを楽しむことができたらいいなと思います」

今回は展示場所を提供するのみでしたが、水島さんは「対話アートに参加するのもこれで終わりとは思っていないので、ブラッシュアップしながら毎年続けて行きたい」と締めくくりました。

店舗情報

ターミナル51°

住所:〒381-0034 長野県長野市高田五分一420

URLhttps://terminal51.jp

連絡先:090‐8593‐6601

InstagramTerminal51°

ライティング:まついあきこ

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「障がいのある人とない人の接点を創る」ためのいろんな企画や情報発信をしています。

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