「障がい」や「生きづらさ」をテーマにしたアート作品を街中に展示する『対話アート NAGANO WEEK』(主催:NANAiRO)
2年目となる2023年は「Minority Empowerment.」というコンセプトを掲げ、より多くの人がかかわり、展示やイベントの内容も多岐にわたりました。
そのイベントの様子をレポート。
後半は「自分らしく働くこと・生きること」をテーマに、さまざまな人の取り組みや思いを紹介します。常に社会を変えてきたものは、マイノリティから生まれてきました。
その声が届くようにすることは、地域社会の豊かさにつながると信じて。
カミジョウミカ × 弓指寛治コラボレーション

2023年10月、2人の作家によるキャンバス上の対話が始まりました。
時間をかけて、それぞれの感情の探究と新しい視点の交差の先に生まれた作品とは。コラボレーションを通して感じたことを、それぞれ語っていただきました。
制作過程
- 事前に何度かオンラインで話をする機会をもち、2023年10月29日に初めてリアルで対面。
- その日に一緒に絵を描く。
- その後、11~1月にかけてカミジョウさんが続きを描く時間を重ね、それに応えるように2月に弓指さんが続きを制作。
- 2024年2月11日に再び対面し、作品が完成。
カミジョウさんが「対話アート」で初めて体験したこと
私は今まで1人で描いてきたので、今回弓指さんと一緒に制作する時間をいただいて、人とおしゃべりをしながら描くということを初めて体験したんです。
脳の別部分が一緒に動いている感じで、おしゃべりしながらも、集中して絵を描いている。私もこういうことができるんだ、と新鮮な体験でした。その後、何回か1人で続きを描きに来たときは、サポートに来てくださったボランティアさんとお話ししながら描くのも楽しくて。
「これも対話アートだな」と感じて、またこれからもやってみたいと思いました。
カミジョウさんが描いたもの
私が好きな「目玉」のモチーフを描きたいというイメージはありましたが、実際は出たとこ勝負だろうとも思っていました。
2人で描いているときに、私が使う道具に弓指さんが興味をもってくれたり、寄生虫の話題で意気投合したり。そんなやり取りの中で描くものが自ずと決まっていって、1人で続きを描いているときも、それに導かれて手を動かしていましたね。
また、制作前に弓指さんと何度かオンラインでやり取りをする中で、「私も大きいキャンバスに描いてみたい」と伝えたら、「じゃあやってみよう」と。
今回初めて100号という大きさに挑んだんです。
目の当たりにすると、想像以上に大きくて・・・。限界まで腕を伸ばして届くところに描くというように、この広いキャンバスのどこに描くかという着地点も自然に見えてきたんです。
1人で描くときは、机に置いたキャンバスをボランティアさんに動かしていただきながら、4辺に自分の描きたいものを思い切り描きました。
私は体調や寒さを考慮して1月初めを制作の区切りにしましたが、ここから弓指さんがどういうふうに描いていくのか、とても楽しみにしていました。
「対話」が作品につながっていく実感
オンラインでのやり取りやコラボレーションの中でのコミュニケーションが、新たな進展・進化を生んで、それを作品にしていく、という流れができていきました。
それこそが「対話アート」の重要な部分の一つなのだと思います。

事前に半分ずつ素材を持ち寄り、ボランティアの協力も得て下地を作った。カミジョウさんはペットボトルのラベル、アルミホイル、飲んだ薬の袋など。弓指さんは新聞を。なぜその素材なのかも、一緒に描く中で互いに話していった。

霧吹きで色を吹き付けるカミジョウさんを見て、「それ何?」と弓指さんが尋ねる場面も。

コラボレーション初日に2人でここまで描き進めた。

1人での制作風景。いろいろな人がカミジョウさんの制作をサポートするボランティアに参加。

1976年生まれ。長野県在住。常染色体劣性遺伝性疾患アノーゼティック異形成症という希少疾患をもつ。頭の中に浮かぶ「カラフルな空想と夢の世界」を主なテーマとし、創作している。国際障がい者アート展最優秀賞受賞(2014年)、ほか受賞多数。