【イベントレポート 】ウェルフェアトレードとは? マジェルカ・藤本光浩さんに聞く価値の作りかた

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ウェルフェア(福祉)とフェアトレード(公正な価格での取引)を組み合わせた言葉、「ウェルフェアトレード」。障がいのある人たちを「支援する対象」としてではなく、ひとりの作り手、対等なパートナーとして向き合い、その手から生まれた価値を市場で正しく評価して社会に届ける——そんな取り組みです。

この考え方を、長年マジェルカ(吉祥寺)の店頭から発信してきたのが、藤本光浩さんです。今回は「ウェルフェアトレードと社会課題」をテーマにしたイベントで、藤本さんに話を聞きました。福祉が一方通行になりがちであるという問題提起から始まった会場では、参加者同士の対話ワークショップも行われました。

 

「素敵だから買う」場所をつくる

公式サイトより

これまで、障がいのある人たちが作った作品を扱うお店は各地にありました。けれどそれは、「素敵だから買う」「欲しいからわざわざ足を運ぶ」場所には、なかなかなっていなかった、と藤本さんは振り返ります。

「福祉施設の側からすると『社会の理解が低い』という話になりがちなんですが、実は福祉施設の人たちも、『素敵だから買ってください』という考え方をあまり持っていなかったんですね。『安く買ってもらえればいい』という形で、喜んでもらうとか、期待される機会自体がなかったんです。それを変えたくて、フェアトレードとしてマジェルカで販売を始めました」

2011年、マジェルカは吉祥寺・中道通りに店を構えました。

 

評価される場所があるかどうか

公式サイトより

ものづくりに対するスタンスは、作り手によってさまざまだといいます。

「『作品の綺麗なところを見てほしい』『ここを期待してほしい』と思っている方もいれば、中には全然興味がないという方もいるんです。売れようが売れまいが、商品になろうがなるまいが、どうでもいい人もいる」

ただ、と藤本さんは続けます。

「自分が作ったものを喜んでもらえれば嬉しいとか、綺麗だと思ってほしいという気持ちは、障がいがあるなしに関わらず、やっぱりあるものなんです。評価される場所があるかないかで、大きく違う。障がいのある人たちは、おそらくずっと、そうやって期待されてこなかったのかなと思います」

自信がないと、安く売ってしまう。早く売りたいから値段を下げてしまう。そうした傾向もあるからこそ、価値をきちんと言語化して広めていくことが必要だ、というのが藤本さんの考えです。

 

価格をどう決めるか

雑貨はお米のように相場感がはっきりしているわけではありません。マジェルカでは、世の中の似た商品の価格帯、作家さんが普段つけている価格、それらを調べたうえで、お客さんの反応や市場を見ながら少しずつ調整していったといいます。

「ハンドクラフトの価格ってピンキリで、『買ってもらえさえすればいい』という人もいれば、すごく高い設定の人もいる。だから一概には言えないんですが、上げたり下げたりしながら見ていきました」

 

福祉施設の中で起きた変化

マジェルカで「それなりの価格」で売れていく。その事実が、施設側にもじわじわと影響していきました。

「2011年当時は、福祉施設のものを一般の市場で売るという動き自体がまだ少なくて。施設の方から『これは500円で売っているんです』と言われて、『いや、500円はないでしょう、せめて1000円で売りましょうよ』と言うと、『そんな値段で売れるわけがありません』という反応が圧倒的に多かった。そこはすごく驚きました」

けれど、「私たちはこの値段で売ります」と決めて、実際に売れていく様子を見てもらうなかで、施設側も少しずつ価格を上げるようになっていったといいます。

 

外からのまなざしが届けるもの

当日の様子

やりとりを重ねるうちに、藤本さんはあることに気づきました。

「福祉施設は、商品の価値を見積もることに自信がないんですよね。『うちの利用者さんたちの作品が、高い値段で売れるわけがない』と。スタッフさんが利用者の方に期待していない、と感じる側面もありました」

だからこそ、目に見える形で「高い値段で売れる」という経験を施設にフィードバックすることが大事だった。お店という場を持つ意味は、そこにあったといいます。

「世の中の人に認められるというのは、作家にとって自信になるんです。期待されないことが続くと、自尊心も下がってしまう。だから外部の人から『すごくいいよ』『価値があるよ』と言われると、一気に自信が上がる。外の人の評価のほうが心に残る、というのもありますよね。価値を示してくれる存在が福祉施設の外にいることで、関わっている施設の方々もどんどん前向きになっていった印象があります」

一方で、ご家族が抵抗を示すケースもあったといいます。税金を使ったサービスのなかで「商売をしている」「儲けている」と思われたくない、という感覚。けれど、売上は施設ではなく作り手である利用者に還元されるもの——そこは丁寧に説明を重ねていったそうです。

 

ターゲットは「福祉と関わりのない人たち」

マジェルカが意識してきたのは、普段から福祉施設で買い物をする層ではなく、福祉や障がいと接点のない人たちでした。

「ボランティアのように時間を使う関わり方ではなく、もっと気軽に関わるきっかけとして、『素敵な買い物ができる場所』を作りたかった」

吉祥寺の中道通りという立地は、その思想を体現しています。偶然立ち寄った人が、自然と出会う場所。

実際、多くのお客さんは最初、福祉のお店だと知らずに入ってくるそうです。商品を気に入って手に取ったところで、「こういう人たちが作ったものなんですよ」と伝えると、「もっと高くてもいいのに」「いい買い物をした」という反応が返ってくる。福祉施設のショップより高めに設定していても、「安い」と言われることのほうが多かった、と藤本さんはいいます。

客層は30代〜50代の女性が9割。リピーターも多く、ECサイトでも継続的に購入されています。もう一つ目立つのが、障がいのある子どもを持つ親御さんです。将来への不安のなかで、マジェルカに「希望を感じた」という声も寄せられたそうです。

 

「障がいがあるから買ってください」では選ばない

当日の参加者の様子

取扱商品の基準は、はっきりしています。お金を払ってでも欲しいと思える価値があるかどうか。クオリティに加えて、ユニークさや、ほかにない魅力。それらを総合的に見て判断する。

「『障がいがある人が作ったから買ってください』という売り方の作品は扱わない。同じような商品でも、特徴がなければお断りすることもあります」

ただし、完璧さだけが基準ではないといいます。

「一見、失敗のように見えるものでも、そこに面白さやストーリーを感じれば価値がある。きれいに整いすぎているものよりも、揺らぎや遊びがあるもののほうに魅力を感じることもあるんです」

そうした自由さは、福祉のものづくりだからこそ持ちうる部分でもある、と藤本さんは語ります。

「完璧である必要はなくて、もっと自由に、面白く作っていい。その価値を社会に届けていくことが大事だと思っています」

ウェルフェアトレードは、「助けてあげる」のではなく、「良いから買う」の積み重ねで成立する仕組みです。価格をつけ、お客さんの反応を見て、作り手にフィードバックを返す——その地道なやりとりのなかで、施設も、作り手も、買い手も、少しずつ姿勢が変わっていく。

藤本さんの話からは、福祉と市場のあいだに新しい関係をつくる価値の輪郭が、静かに浮かび上がってきます。

イベント動画は以下をご覧ください。

藤本光浩さん

マジェルカ 代表

障がいのある人が生み出す雑貨の価値に着目し、「ウェルフェアトレード」という概念を提唱。福祉を支援ではなくビジネスとして成立させ、作り手と社会をつなぐ新しい流通の仕組みを構築している。

ライター:野田

 

のだ あゆ
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のだ あゆ

食・農・福祉を軸に、人と人がつながる場づくりの実現を目指しています。現在ナナイロの他、社員食堂、整体、介護、市民農園で活動中。

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