対話アートNAGANO WEEK2024の上田市では、「言葉Tシャツ展 -ホンネはうちがわに-」と題した展示を、NPO法人リベルテのton-屯-と新棟ショップ、御菓子処千野、上田映劇、ふとんのたけうち、犀の角、hyvä saunaの計7ヶ所で展開されました。

担当したのは、障害のある方たちと「何気ない自由」や「権利」を尊重していける社会や関係、場づくりを行っているNPO法人リベルテ。
本展示のコンセプトや作品のことについて、展示を担当したリベルテ支援員の佐藤友紀さんと南澤諒真さんにお話を伺いました。
ものづくりが解決してくれることがたくさんある

– リベルテの利用者さんのアート活動との向き合い方は?
佐藤さん:絵を描くとか手芸をするといったツールがあればコミュニケーションがスムーズだなという感覚はあります。
ここには最初から絵を描きたいと思っている人もいますが、それ以前に外に出たことがない人や、朝起きるのも大変で生活のリズムが整っていない人もいます。そういった方々にとっては、家じゃない場所にただいるだけでも大変なんですよね。
そんなとき、ものづくりが解決してくれることがたくさんあると実感しています。
南澤さん:僕も利用者さんと過ごす中で、何かに触れている、何かを作っている方が、お互いに落ち着き、その場所に居やすくなる感覚があります。
長い時間を過ごしていると、気持ちが逸れるのもいいのかもしれませんね。目的があってものづくりをしている人もいれば、「なんだかわからないけどできちゃった」という人もいて。リベルテの中に流れている空気を大切にしているのだと思います。

– 担当した展示について教えてください
佐藤さん:今回の対話アートでは「言葉Tシャツ展 -ホンネはうちがわに-」という展示を行いました。
実はコンセプトを決めるより前に、利用者さんであり作家のAiKAさんが描いたTシャツがすでにあって、スタッフのあいだで「この作品っておもしろいよね」という話題が生まれていました。そこから組み立てたのが今回の展示です。
AiKAさんは自分の気持ちをポエムにして書いたり、録音したりして表現活動をしている作家です。日記や手紙を書くことも大好きで「心配しているよ」「大好きだよ」という気持ちを書いて渡してくれるんですよ。
南澤さん:AiKAさんのことばは、もう120%佐藤さんへのメッセージですよね。
佐藤さん:私がこの仕事を始めた頃にAiKAさんとマンツーマンで接していて、とても仲良くしていたんです。その後、彼女がいるアトリエの担当を外れたあともお手紙を書き続けてくれていました。
あるとき、みんなで宮城県に行くというイベントがあり、AiKAさんはそのイベントを楽しみにしていたけど、結果的に行けなかったという出来事があって。行きたかったけど行けなかったという収まりのつかない気持ちをTシャツにしたためたのが、今回の作品のきっかけです。
自由な空間だからきっとなんでも描けるし、表現できる

– 障がい者アートを通じて楽しいと思うときはどんなときですか?
佐藤さん:リベルテでは同じ空間の中で、ずっと手を動かしている人もいるし、ずっと寝ている人もいます。
そんな自由な空間だからきっとなんでも描けるし、表現できるし、好きなことを喋れるんだろうな、と。そう考えると、リベルテのみんなはとても空間づくりが上手いんじゃないかと思うんです。
言葉にはしないでも、互いを肯定しているというか、同じ空間をつくろうとするときの気遣いが感じられて、同じ場所にいるととても勉強になるんです。ここでしか感じられない感覚です。
見えない空気をつくることも大切な仕事

南澤さん:アートとはちょっと違うかもしれませんが、リベルテの中で感じていることとしては、メンバーが空気や文化をつくっているということに気づいたときに驚かされることがあります。
ある日、誰かがおならをして、その音を聞いた他の人が「今日体調悪いね」とか「あ、今日は調子いいんじゃない?」っていう会話をしているのを聞きました。そのとき、彼らが「誰もが自由におならをしていいっていう文化をつくっている」ことに気づきました。
働くって、仕事ってなんだろうって考えたとき、目に見える何かを生み出すことだけが仕事じゃなくて、見えない空気をつくることも大切な仕事だと思うようになりました。
障がいという言葉とうまく距離をとりながら作品を紹介して行きたい

– 作品に寄せたキャプションはどのように書かれていますか?
佐藤さん:障がいに関係なくおもしろいものをつくっている人たちがたくさんいるので、その人の背景がわかるように制作過程を完結に書けたらいいなと思っています。
たとえば産直で買う野菜に貼ってある生産者さんのシールのように、ちょっと顔が見えて、なんとなくその人のことがわかるような感じで。その上で鑑賞する人が作品に愛着を持ってもらえたらうれしいですね。

南澤さん:展示によっては、作品よりも先にキャプションに目が行ってしまうのがもったいないときもあるので、先入観なしに作品を面白がってもらいたいときと、背景を伝えた上で鑑賞してもらいたいときで伝え方を変えています。
書きすぎると障がいという言葉が強くなってしまうので、うまく距離をとりながら作品を紹介していきたいです。


リベルテの取り組み:社会とつながる媒介であり続けること

NPO 法人リベルテ 代表 武捨和貴さん:5年、10年かけて人生を考えられる居場所があればいいな、という思いからリベルテは始まりました。
目指したのは生活の文脈と切り離されることのない場所です。
今もプログラムはあまり意識せず、絵を描いている人や何かを作っている人がいる傍らで、居眠りをしている人がいたり、ほんの1時間で帰る人もいます。大切なことはこの場所が、彼らが社会とつながる媒介であり続けることなのです。
これからは、メンバーの在り方が地域の障がいへの意識や福祉への関心を変えていくのではないかと思います。社会が障がいのある人たちのことに気持ちを寄せたとき、リベルテの活動をヒントに変わってもらえることを願いながら、この場所を続けていきたいです。
キュレーター紹介

佐藤 友紀
生活支援員
長野県上田市出身。家族と愛猫3匹と暮らす。長年引きこもり生活をしていたが2022年に縁あってリベルテにボランティアとして関わるようになる。2023年度よりリベルテに入社。生活支援のほか、主にグッズ・プログラムの制作やイベント企画に携わっている。

南澤諒真
生活支援員
ミレニアム世代。上田市出身。愛犬のリアムくんと生活している。大学時に犀の角、上田映劇と関わり、2024年にリベルテに流れつき入社。主にアトリエでの制作や企画に関わっている。土曜のメンバーによるモミモミタイムが癒しの時間。
団体紹介

特定非営利活動法人リベルテ
〒386-0023 長野県上田市中央西1丁目9-5
TEL : 0268-71-7358
NPO法人リベルテは、2013年に柳町自治会の築200年を超える古民家を借りて、障害福祉事業所「スタジオライト」の運営を開始しました。当初は週に1回の土曜日だけ開かれていたスタジオでしたが、障害を持つメンバーのために、毎日アトリエのドアを開けました。当時、スタッフの黒岩がお弁当を自分たちをメンバーの分もつくって一緒に食べました。現在、2023年10月にできた事業所「1の人100の言葉1000の時間」では就労支援の一環でアトリエの給食をつくって、メンバーがつくっているお昼をメンバーが食べています。
施設紹介


上田映劇
https://www.uedaeigeki.com
〒386-0012 長野県上田市中央2丁目12-30

hyvä sauna
https://www.hyva-sauna.com
〒386-0041長野県上田市秋和1110-8


犀の角
http://sainotsuno.org
〒386-0012長野県上田市中央2丁目11-20
TEL: 0268-71-5221(7:30~10:00/16:00~21:00)